前回、車両での尾行方法についてお話いたしましたが、今回は徒歩での尾行についてです。
これぞ探偵といったところでしょうか。
車両尾行とはまた違ったスキルが必要にはなってきますが、きちんと準備をして臨めば意外とやりやすい場合が多いです。
以下に見ていきましょう。

① 面取り

まず一番最初にやることは、車両尾行の場合でもそうですが、「面取り」を正確にやらなければいけません。
徒歩尾行が想定される調査の場合は、特にこの「面取り」次第で調査の結果が左右されるといっても過言ではありません。

「面取り」というのは、依頼者から提供された写真や画像データ等を元に、対象者(ターゲット)の顔、ひいては目元や鼻、眉毛や耳の形、輪郭、ほくろの位置などを徹底的に頭に叩き込み、実際の現場で対象者を特定する作業です。

髪型に関しては写真がいつ撮られたかにもよりますが、その日によってヘアースタイルを変えることができますし、特に女性なんかは当てになりません。
この「面取り」ですが、想像以上に難しい場合があります。

若い女性が対象者の場合は、メイクでかなり変わってしまうので、完全に記憶するぐらい叩き込まないと見落としてしまう可能性が高いのです。
また、帽子やサングラス、メガネの有無によっても人間の印象は変わってきますし、雨の日は傘が邪魔になって非常にやりにくくなります。
このような場合には、顔だけでなく、事前に情報があれば着用品で判断する時も少なくありません。
このように写真一枚で初対面の人間を識別しないといけないとなると容易ではないというのが想像できるかと思います。

実際、全くの別人を尾行してしまうことは探偵をやっているなら一度や二度は必ずあるはずです。
しかし、複数の調査員がいますので、そのうちの一人が「面取り」を行い、人違いであれば張り込み場所に戻ればよいので、完全に見落とすということは稀だと思います。

② 距離

「面取り」が完了すれば、いよいよ尾行開始です。

徒歩での尾行ですが、基本的には二人一組で実施します。
もちろん、現場の状況や対象者の警戒状況、調査の時間帯によっては増員しますが、2~3名で実施する場合が多いです。

まず対象者との距離感ですが、これも前回の車両尾行と同じでケースバイケースです。
この距離感というのは、何度も場数を踏んで体で覚えていかないと、口では説明しにくいです。

状況にも寄りますが、例えば朝のラッシュ時なんかは信じられないぐらい近くで(肩と肩が触れ合うくらいw)いますし、夜間の人通りが少ない場面ではやはり見失わない程度に距離を置きます。
また車両の場合と違って、通行人などの障害物を避けて自分で対象者との距離をコントロールできますし、またその障害物を隠れミノにすることもできますので、そういった意味でも車両尾行よりかはやりやすいと感じています。

③ 視線

徒歩尾行の時の鉄則ですが、対象者と絶対に目を合わさないというのがあります。
目が合うと、少なからず印象に残りますので、基本は視線を落としているのです。
ですので、尾行中も視線を落としています。

つまり、対象者を追うというよりも対象者の「靴」を追うのです。

ただ、対象者がビジネスマンなんかだと似たようなビジネスシューズが多いので、その場合はカバンや時計、もっというと下半身全体を追うという感じです。

しかし、尾行を継続していると対象者が思いもよらない行動をすることがあります。
急にUターンしたり、いきなり立ち止まったりと様々ですので、どうしても目が合ってしまうことがあるのです。
1回ならまだしも2回は完全にアウトですから、速やかに調査員を入れ替えます。

④ 変装

探偵は色々な変装をしているように思われがちですが、実は皆さんが思われているほど変装はしていません。
変装をするというよりも、その場の空気に溶け込むことを意識しています。

ビジネス街ならスーツを着るでしょうし、またある時は作業服を着る時もあります。
帽子やメガネを着用するだけでも印象は変わりますし、女性調査員の場合は髪を束ねたりするだけでもイメージは変わります。

また、変装ではないですが、原色系(赤・青・黄)の色や柄物などの服は着ません。
印象に残りやすいからです。
ですので、黒やグレー、紺など極力目立たない服で、なおかつ脱いだり着たりが容易にできるものを好んで使っています。

⑤ タクシー

徒歩尾行の中で、探偵泣かせなことの一つが対象者のタクシー乗車です。
探偵は徒歩尾行といえども、必ず車両は用意しています。
いつ何が起こるかわかりませんし、このように急なタクシー乗車も考えられるからです。

しかし、対象者が電車を乗り継ぎ、そこからタクシーに乗車するような場合、必ずしも探偵車両が近くに待機できているとは限りません。
その場合は、当然ながら我々もタクシーに乗車し、尾行を続行します。
息を切らしながら、タクシーの運転手に「前のタクシーを追ってください!」とドラマさながらのことをやるわけです。

ただ、タクシーの運転手も一般人ですので、ドライブテクニックがあったとしても、信号無視等の無茶まではやってもらえません。
でも、対象者を見失うよりかはマシですから、できる限り頑張ってもらうしかないのです。

運よく後続のタクシーに乗れた場合はまだ良いのですが、対象者が乗った1台しかタクシーがなかった場合。

・・・皆さんならどうされますか?

もう絶望的ですし、どんなに優秀な探偵でも成す術がありません。
100%見失います。
しかし、そこは探偵ですのでタダでは転びません。

この場合は、とにかく走って走って走りまくりますw

そして、どの方面へ向かったか、また何個目の信号をどちらに曲がったかぐらいまで確認するのです。
そこから、場所や時間帯、対象者の年齢や行動パターンにもよりますが、行き先を推測できる場合もあるのです。
「あの人が、この時間帯で、あの道を左に曲がったということは、その先は・・・」という具合です。

また、タクシー会社とタクシーのナンバーがわかれば、あとでタクシー会社に連絡をして降車位置を教えてもらうという手もあります。
聞き出す理由は考えないといけませんし、必ず教えてくれるわけではないですが、イチかバチかやってみる価値はあると思います。

こういう状況を回避する手法の一つとして、対象者がタクシーに乗る前に、こちらが先にタクシーに乗るコツがあります。
それは、尾行というのは対象者の後方から追うものですが、それとは逆の前に回るのです。

もちろん、二人ないし三人一組で尾行しているわけですから、全員ではなく一人だけ前を歩かせ、対象者がどのような行動をとっても対応できるように挟み撃ちにする形です。
対象者がタクシーに乗る前というのは、それなりの行動をします。予兆があるわけです。
駅のロータリーなんかで、立ち止まってキョロキョロとあたりを見渡し出したら、タクシーを探している可能性がありますよね。
また他の誰かが迎えに来る可能性もありますので、そのような行動が確認出来たら、対象者の前方にいる調査員は走ってでも先にタクシーを拾うべきなのです。

 

いかがでしたか?
まだまだ書ききれないことがたくさんありますが、ざっくり言うとこんな感じです。w

またできれば続編も書きたいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!